坐骨神経痛(図1の@AB)は、腰椎(ようつい)の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)などの脊柱疾患に伴いやすく、ヘルニアや狭窄による刺激で坐骨神経に炎症を起こしたものです。
刺激が一過性であれば、炎症を治めるだけで痛みは緩和しますが、刺激そのものを取り除かなければならない場合は手術が必要です。いずれにしても、緊急手術を要する場合を除き、すべては保存的治療からスタートします。
さて、治療の第一歩は「安静」で、次が「薬物療法」です。神経の炎症を治めるために消炎鎮痛薬の内服・座薬・注射などが使用されますが、薬物は全身作用の一部として神経に作用するため、胃腸障害などの副作用には注意が必要です。従って、薬物が使用できない場合や薬物療法の効果が不十分な場合は次の神経ブロックが選択されます。
神経ブロックでは、硬膜外ブロック(詳しくはコチラ)や神経根ブロック(詳しくはコチラ)が行われます。硬膜外ブロックは腰から注射する腰部硬膜外ブロック(図2のA)と、尾てい骨の近くから注射する仙骨硬膜外ブロック(図2のB)に分けられます。
いずれも原因となる神経の近くに局所麻酔薬をしみ込ませて炎症を治める治療法ですが、腰部硬膜外ブロックが図1の@ABのすべてが適応となるのに対して、仙骨硬膜外ブロックの場合は、一般的には図1のBが適応となります。
ところで、治療に伴う痛みが気になりますが、血管注射のようにチクッとするだけです。
一方、神経根ブロックは炎症を起こした神経根に直接に局所麻酔薬を注射する治療法です(図2のC)。
一般的には局所麻酔薬を使用しますが、特殊な針で神経根に高周波の電気刺激を加えるルート・パルス(同18年11月25日号)という方法も行われます。
いずれにしても、神経根ブロックでは神経に針が当たった瞬間に結構な痛みを伴うため、適応は厳選されます。
ここで、薬物療法や神経ブロックは単なる痛み止めと誤解されることが少なくありません。しかし、いずれも神経の炎症を治める治療法であり、特に神経ブロックは自然治癒力を活性化させる治療法なのです。もちろん これらの治療で痛みが緩和しない場合は、手術も考慮されます。
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