「坐骨神経痛」について【2】


 今回は、脊柱(せきちゅう=背骨)疾患で起こる坐骨(ざこつ)神経痛について説明します。
 

 脊柱はたくさんの椎骨(ついこつ)が並んだもので、中心のトンネルのような空間が脊柱管です(図A)。この脊柱管は硬膜によって外側の空気の層「硬膜外腔(こうまくがいくう)」と、内側の脊髄(せきずい)液で満たされた層に分けられますが、脊髄はその脊髄液の中を通ります(図B)。

 
 ところで、脊髄は第2腰椎辺りで終わり、そこから下の脊柱管には、脊髄から左右対称に伸びたたくさんの脊髄神経が通ります。これらの脊髄神経は腰神経や仙骨神経などに分けられますが、見た目が馬のしっぽに似ていることから、「馬尾(ばび)神経」と総称されます(図A)。

 
 この馬尾を構成する脊髄神経の特徴は、ある椎間(=椎骨と椎骨の間)で脊柱管の一番前にある神経は必ずその一つ下(尾側)の椎間の椎間孔を通ることです。

 
 例えば、図Cの第3腰椎(B)と第4腰椎(C)の椎間(L3/4)の断面は、図DのL3/4ですが、その断面で一番前にある第4腰神経は第4腰椎(C)と第5腰椎(D)の椎間(L4/5)の椎間孔を通って脊柱管から外へ出ます。従って、L4/5の断面では、第4腰神経の代わりに第5腰神経が一番前に位置します(図D)。ここで、脊髄神経は脊髄液の中では可動性があるために外力の影響は受けにくくなりますが、椎間孔を通過する直前の脊髄神経は可動性が損なわれて傷害されやすくなります。

 
 さて、坐骨神経は第4・第5腰神経、第1・第2・第3仙骨神経の枝で構成されるため、脊柱疾患ではL3/4以下の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄(きょうさく)で脊柱管が圧迫される場合、あるいはL4/5やL5/S1の椎間孔が狭く(椎間孔狭窄)なって、脊髄神経が直接に傷害される場合に坐骨神経痛が起こります。L3/4、L4/5、L5/S1で脊柱管が圧迫される場合は、先述のように脊柱管の一番前にある脊髄神経が傷害されやすいため、それぞれ左右いずれかの第4・第5腰神経、第1仙骨神経が傷害されます(図D)。特にL4/5では第5腰神経のほかに、第1仙骨神経も傷害されやすくなります。

 
 次に、L4/5とL5/S1の椎間孔狭窄は外側型の椎間板ヘルニア(平成17年9月24日号)、あるいは椎体や椎間関節の変形で起こりますが、それぞれ第4、第5腰神経が傷害されます。