帯状疱疹(ほうしん)について

 

 今回から、シリーズで「帯状疱疹」の説明をします。

 

 

 

 ところで、中国地方では帯状疱疹を「けさ」とか「胴まき」などと呼ぶことがあります。これは、帯状疱疹の水疱(すいほう)が背中から胸にかけて帯のように、あるいは胴の周りでは腹巻のように出現することから生まれた方言です。この帯状疱疹では、頑固な神経痛を伴うことが多いため、帯状疱疹に関する知識を持って、かかった場合には早期に適切な治療を受けることが重要です。

 
 たいていの方は子供のころに水痘(すいとう=水ぼうそう)にかかりますが、治った後も原因となったウイルス(水痘ヘルペス)は体の中の知覚神経に隠れています。そして、疲れたときや免疫力が低下したときにウイルスが活動を再開したものが帯状疱疹です。従って、水痘では全身に水疱ができますが、帯状疱疹では潜伏していた神経に沿った部位だけに水痘が出現するのが特徴です。その好発部位が上半身の胸から背中(約50%)で、次いで目の上からおでこ(約20%)に多く、まれに耳の周辺に出現して顔面神経麻痺(まひ)を起こすこともあります。また、これらの水疱は必ず体の左右いずれかの半身に出現するため、両側性の場合は帯状疱疹の可能性は低くなります。

 
 さて、潜伏していたウイルスが活動を再開する場合、その神経に炎症(神経炎)を起こしながら皮膚の方へ移動します(図1)。そしてウイルスが皮膚に到達して増殖を繰り返して皮膚炎を起こして水疱が形成されます。従って、帯状疱疹では皮膚の違和感やピリピリした神経痛で始まって、数日後に水疱が出現するパターンで発症します。そのため、「肋間(ろっかん)神経痛と言われたが、結局は帯状疱疹だった」というケースも少なくありません。実際に、神経炎の段階での診断は困難です。

 
 いずれにしても、帯状疱疹で水疱を伴っている時期は、神経炎と皮膚炎で痛みを生じるため帯状疱疹痛と呼ばれます。一方、水疱が枯れて皮膚症状が一段落した後も痛みが続く場合は、帯状疱疹後神経痛と呼ばれ帯状疱疹痛とは区別されます。

 
 帯状疱疹は60歳代を中心に50代〜70代に多く、一生涯で約20%の方がかかるといわれます。また、帯状疱疹にかかると一般的な治療では20%〜25%の方で神経痛が続くことが指摘されています。