「すべり症」は椎骨が前にずれた状態のことで、図1のように「変性すべり症」と「分離すべり症」に分けられます。これらの腰椎すべり症では、前にずれた椎骨の名称が付けられるため、図1のA、Bはそれぞれ第4腰椎すべり症、第5腰椎分離すべり症と呼ばれます。いずれも中年期以降に見つかりますが、変性すべり症が女性に多いのに対して、分離すべり症は男性に多いのが特徴です。腰痛の治療を受けた方の約3%に変性すべり症が、また約1・5%に分離すべり症が見つかるといわれます。
しかし、すべり症であっても必ずしも腰痛などの症状を伴うとは限らないため、実際の患者数はこれより多いことが予想されます。
ところで、脊柱(せきちゅう)は、たくさんの椎骨が縦に並んだもので、おのおのの椎骨は、前方は椎間板で後方は椎間関節でつながります(図2)。その脊柱を横から見ると、図2のように曲がっています。これを生理的湾曲といいますが、垂直方向の衝撃を吸収するのに有利で、二足歩行に必要なバランスも取りやすく、歩行時も頭の揺れが最小限に保たれます。
しかし、この湾曲を維持するために各椎骨の連結部分には負担が掛かり、脊柱の下ほどその傾向が大きくなります。特に、腰椎は前に湾曲しているため椎骨は前方にずれやすく、椎間板や椎間関節などの連結部が弱くなると容易にすべり症を起こします。
ここで、変性すべり症の好発部位は第4腰椎ですが、第3や第5腰椎にも認められます。原因は椎間板や椎間関節の年齢的な機能低下のため、その発生率は年齢とともに高くなります。
一方、分離すべり症の好発部位は第4と第5腰椎です。図3のように椎弓が骨折したものが分離症ですが、その状態で椎間板の機能が低下して骨折部が広がって椎体が前方にずれたものが分離すべり症(図1のB)です。40歳〜50歳代の腰痛患者の約6%に分離症が認められ、その20%〜30%が分離すべり症に移行するといわれます。
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